調達コストを削減するには?調達業務の課題とコストを削減する方法

著者:ものづくりコラム運営 調達コストを削減するには?調達業務の課題とコストを削減する方法        
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「資材が高くなった」「送料が上がって利益が減った」 そんな悩みありませんか?
もしかすると、その悩みは調達コストの見直しで解決できるかもしれません。
今回は、調達コスト削減の重要性や具体的な方法、注意点などをわかりやすく解説していきます。

1.調達業務における課題

多くの製造業にとって、調達業務は利益に直結する重要な業務です。
しかし、その一方で多くの企業がさまざまな課題を抱えており、これらの課題を理解し、適切に対処することが調達コストの削減につながります。ここでは、主な3つの課題について詳しく見ていきましょう。

業務が煩雑化しやすい

調達業務には、見積書や注文書のやり取り、納期管理など、多くの定型的な業務が存在しています。これらの業務は一見シンプルに見えますが、取り扱う資材の品目が増えるにつれて業務量が急激に増加し、煩雑化することがあります。
例えば、10種類の資材を扱う場合と100種類の資材を扱う場合では、管理すべき情報量が10倍になります。それに伴い、発注や納期管理の作業量も大幅に増加します。
さらに、多くの中小製造業では、これらの業務をアナログな方法で管理していることが少なくありません。紙の帳簿や Excel ファイルなどでの管理は、業務が煩雑化した際に作業ミスや遅延を引き起こす可能性が高くなります。例えば、発注漏れや重複発注、納期遅延などのトラブルが発生しやすくなり、結果として調達コストの増加につながってしまいます。

スキルや経験が属人化しやすい

調達業務は、長年同じ担当者が従事しているケースが多く見られます。
そのため、業務の進め方や納入状況の管理、取引先との関係性などが属人化し、担当者以外が理解しにくい状況が生まれてしまうことが少なくありません。部品や材料の納入状況を都度、同じ調達担当者へ問合せをしてしまい、さらに負荷を高めることもあります。また、企業によっては調達担当者が在庫管理を行うなど業務の幅も広く、担当者に頼ってしまいがちです。
この状況下で、担当者が突然離職したり、長期休暇を取得したりした場合、業務の引き継ぎが非常に困難になります。新しい担当者が業務を理解し、同等のパフォーマンスを発揮するまでに長い時間がかかり、その間の業務効率の低下や調達コストの上昇は避けられません。

コスト削減が難しい

調達業務が属人化・ブラックボックス化していると、適切な価格交渉や発注量の調整などが行われず、コスト削減の機会を逃してしまう可能性があります。
また、部署や担当者によって調達先が異なっている場合、同じ資材を割高な価格で購入してしまったり、情報共有不足によって過剰な在庫を抱えてしまったりするなど、非効率な調達が行われているケースも見られます。

これらの課題を克服し、効率的な調達業務を実現することが、調達コストの削減につながります。次のセクションでは、具体的な調達コスト削減の方法について解説します。

2.調達コストを削減する方法

調達コストの削減は、多くの企業にとって重要な経営課題となっています。特に近年は、物流コストの上昇や資源価格の高騰などが調達コストに大きな影響を与えており、企業の利益を圧迫しています。そのため、調達コストを見直し、効果的に削減する方法を実践することが急務となっています。ここでは、調達コストを削減するための具体的な方法を3つご紹介します。

調達プロセスを見直す

調達コストを削減する第一歩は、現在の調達プロセス(業務フロー)を見直すことです。現状の調達プロセスを可視化し、無駄な工程や非効率な作業が発生していないか、徹底的に洗い出すことが重要です。
調達プロセスを見直す際は、まず現状の流れを可視化することが重要です。例えば、以下のような項目を明確にしていきます。
<チェック項目例>
☑ 発注見積の依頼・精査・社内承認の方法や手順
☑ 発注書の発行方法・承認の方法や手順
☑ 納品・検収の方法や流れ
☑ 請求・支払の方法や流れ
☑ 各プロセスの管理方法(Excel・手書き・システム入力など)

各工程における業務フローを明確化し、標準化・簡素化できる部分がないか、関係部署と連携しながら検討してみましょう。
調達プロセスを明確化し、システム化などによって標準化することで、担当者による属人的な業務を減らし、業務効率化と人的ミス(発注ミス)の削減によるコスト削減効果が期待できます。
例えば、複数の部署で同じ資材を重複して購入しているようなケースがあれば、調達を一括化することで、まとめて大量購入による値引き交渉などが可能になります。
また、調達プロセスの見直しは、一度行えば終わりではありません。定期的に見直しを行い、常に最適化を図ることが重要です。

サプライヤーの数を減らす

調達コストを削減する効果的な方法の一つに、サプライヤーの数を減らすことが挙げられます。ここでいうサプライヤーとは、企業に製品や原材料、サービスを提供する取引先のことを指します。
複数のサプライヤー(仕入先)と取引を行うことは、リスク分散の観点などから有効な場合もありますが、取引先が増えるほど管理工数も増え、結果としてコスト増につながってしまう可能性もあります。
そこで、既存のサプライヤーとの取引内容を見直し、サービス内容が重複しているサプライヤーとの取引を統合したり、取引量が少ないサプライヤーとの取引を停止するなど、思い切ってサプライヤーの数を減らすことを検討するのも一つの方法です。

【サプライヤー数を減らすことのメリット】
業務の合理化 取引先が減ることで、管理業務が簡素化され、効率が向上します
交渉力の強化 特定のサプライヤー(仕入先)への発注量が増えることで、より有利な条件で交渉できる可能性が高まります
品質の向上 少数の信頼できるサプライヤー(仕入先)に絞ることで、品質管理がしやすくなります
関係性の深化 取引量が増えることで、サプライヤー(仕入先)とのパートナーシップが強化され、長期的なコスト削減につながります

ただし、サプライヤー(仕入先)の数を減らす際は、慎重に進める必要があります。各サプライヤーのサービス内容を分析して無駄を省き、最適な仕組みを再構築することが重要です。また、特定のサプライヤーへの依存度が高くなりすぎないよう、適度なバランスを保つことも大切です。
サプライヤーとの関係を再構築することで、単なる値下げ交渉ではなく、互いにメリットのある形でのコスト削減が可能になります。例えば、発注の平準化や先行情報の共有により、サプライヤー側の生産効率が向上し、結果として調達コストの削減につながるといったケースもあります。

システムを導入する

調達業務の効率化と調達コストの削減を実現する強力なツールとして、調達管理システムの導入が挙げられます。システムを活用することで、購買情報や購入者、購入日などの情報をしっかりと管理することができます。システムを導入することで、調達(資材)担当者や設計、事務所、製造といったそれぞれの部門担当者が、同じ画面で納入状況が把握できるようになるため、社内問合せ工数も減らせ、常に進捗を意識した業務改善にも期待できます。
調達管理システムを導入することで得られる主なメリットは以下の通りです。

・情報の一元管理
見積もりや単価情報、発注履歴などを一元管理できるようになります。これにより、情報の散逸を防ぎ、必要な時に必要な情報にすぐにアクセスできるようになります。
・業務の可視化
調達業務の各プロセスをシステム上で管理することで、業務の流れが可視化されます。これにより、ボトルネックの発見や改善点の特定が容易になります。
・分析の容易化
蓄積されたデータを分析することで、調達傾向や課題を把握しやすくなります。例えば、特定の部材の価格推移や、サプライヤーごとの納期遵守率などを簡単に確認できるようになります
・自動化による効率化
発注書の自動生成や承認プロセスの電子化など、多くの業務を自動化できます。これにより、人為的ミスの減少と業務スピードの向上が期待できます。また、在庫の発注点(安全在庫数)などを指定することで、必要数に応じた不足数から在庫発注が容易に行えるようなシステムもあります。
・コンプライアンスの強化
システムによる管理は、不正や誤りを防ぐためのチェック機能を組み込むことができます。これにより、調達に関するコンプライアンスリスクを低減できます。

 
 
システムの導入により、これまで見えづらかった調達業務の実態が明らかになります。その結果、不要な業務の見直しや調達業務の効率化が可能になり、最終的には調達コストの削減につながります。例えば、システムの分析機能を使って、同じ製品を異なる価格で購入している部署を特定し、価格の標準化を図ることができます。また、発注のタイミングや数量を最適化することで、在庫コストの削減も可能になります。ただし、システム導入には初期投資やユーザーの教育が必要となります。中小製造業の場合、大規模なシステムではなく、クラウド型の比較的安価なシステムから始めるのも一つの方法です。
調達業務の効率化は、人材不足の解消や人材育成コストの削減、生産性の向上など、企業にとって多くのメリットをもたらします。しかし、自社の規模や業務内容に合った適切なシステムを選択することが重要なため、システム選定の際には自社の業務内容や必要条件を把握したうえで検討する必要があります。

【関連コラム】生産管理システムを導入するメリット・デメリット|選び方やおすすめ

3.調達コストを削減する際のポイントと注意点

調達コストの削減は、単に価格を下げることだけではありません。長期的な視点で戦略的に取り組むことが重要です。ここでは、調達コストを効果的に削減するためのポイントと、削減を進める際に注意すべき点について解説します。これらを理解し、実践することで、持続可能な調達コスト削減を実現できます。

調達コストを削減する際のポイント

①サプライヤーの特性や状況を正しく知る
調達コストの削減には、適切な削減方法を選ぶ必要があります。そのためには、取引先であるサプライヤーの特性や状況を正確に把握することが重要です。例えば以下の点を考慮する必要があります。
【チェック項目例】
・サプライヤーの規模と経営状況
・提供される製品、サービスの品質と安定性
・納期の遵守率
・技術力や革新性
・価格競争力
・取引の継続性や関係の深さ
これらの情報を正確に把握することで、各サプライヤーに適した交渉戦略を立てることができます。例えば、長期的な取引関係にあり、高品質な製品を提供しているサプライヤーに対しては、単純な値下げ要求ではなく、共同での効率化や技術開発といったアプローチが効果的かもしれません。
一方、品質や納期に問題がある場合は、価格よりもそれらの改善を優先的に求めるべきでしょう。サプライヤーの特性や状況を正しく理解することで、短期間で調達コスト削減の成果を上げる可能性が高まります。
②自社の体制や問題点を把握する
調達コストを削減するためには、まず自社の調達体制や問題点を把握することが重要です。例えば、特定のサプライヤーへの依存度が高い場合、価格交渉が難航したり、不利な条件を飲まざるを得ない状況に陥る可能性があります。また、社内の情報共有が不足していると、適切な調達計画が立てられず、無駄なコストが発生してしまう可能性も考えられます。
【チェック項目例】
・自社の購買力(発注量、金額)
・代替サプライヤーの有無
・自社製品・サービスにおける当該調達品の重要性
・自社の技術力や市場での競争力
・財務状況このように自社の現状を把握することで、単純な値下げ交渉だけではなく、調達の質や量などの見直しを中心とした戦略も検討できるようになります。いかに、価格交渉以外の対策例をいくつかご紹介します。

発注の平準化 サプライヤーの生産効率を上げることで、間接的にコスト削減を図る
仕様の見直し 過剰品質になっていないか確認し、必要十分な品質に調整する
代替品の検討 同等の機能を持つ、より安価な製品への切り替えを検討する
内製化の検討 自社で生産することでコスト削減が可能か検討する

このように、自社の調達体制や問題点を把握することで、適切な対策を講じることができ、より効果的に調達コストを削減できるようになります。

調達コストを削減する際の注意点

①価格交渉を最優先事項にしない
調達コスト削減において、価格交渉は重要な要素の一つですが、価格だけにこだわりすぎるのは危険です。品質や納期の遵守など、サプライヤーとの信頼関係を損なわない範囲で、交渉を進めるように心がけましょう。過度な価格交渉は、サプライヤーのモチベーション低下や、品質の低下、納期遅延などを招き、結果として自社の損失につながる可能性があります。
【価格交渉を行う際に注意しておきたい点】
・適正な利益をサプライヤーに確保させる
・品質や納期、アフターサービスなども含めた総合的な価値を評価する
・中長期的な関係性を考慮に入れる
・コスト構造を理解し、互いにメリットのある提案を行う

常に、品質と価格のバランスを意識し、サプライヤーとの良好な関係を構築していくことが大切です。

②サプライヤー(仕入先)の供給能力以上の負担をかけない
無理な納期や数量の要求は、サプライヤーに過度な負担を強いることになります。その結果、品質の低下や納期遅延、最悪の場合、サプライヤーの倒産など、取り返しのつかない事態を招く可能性も考えられます。
【サプライヤーがキャパシティオーバーの状態に陥ると生じる問題】
・品質低下:過度な負荷により、品質管理が十分に行えなくなる
・納期遅延:生産能力を超えた受注により、納期が守れなくなる
・コスト増加:急な対応のための残業や外注が発生し、コストが上昇する
・関係悪化:無理な要求が続くことで、サプライヤーとの関係が悪化する

これらの問題は、最終的に調達コストの削減を困難にし、むしろ不必要なコストがかかる可能性もあります。一方的な要求ではなく、お互いに尊重した交渉が行えるよう、以下の点にも注意しましょう。
【サプライヤー(仕入先)を尊重した交渉時の注意点】
・適切な発注計画を立てる:可能な限り先を見越した発注計画を立て、サプライヤーと共有する
・急な変更を最小限に抑える:やむを得ない場合を除き、急な発注内容の変更は避ける
・サプライヤーの状況を把握する:定期的にサプライヤーの生産能力や負荷状況を確認する
・複数のサプライヤーを確保する:特定のサプライヤーに過度に依存しない体制を整える

このように、サプライヤーの生産能力や供給能力を正しく理解し、無理のない範囲で発注を行うことが、長期的なコスト削減と安定調達を実現するために重要です。

4.調達コスト削減を実現し、更なる成長へ

今回は、調達コスト削減の重要性や具体的な方法、注意点などを解説してきました。調達コストの削減は、単に価格を下げるだけの短期的な取り組みではありません。持続可能な形で調達コストを最適化し、企業の競争力を高めていく長期的な取り組みです。そのためには、以下のようなステップを踏むことが重要です。

【改善ステップ】
・現状分析:自社の調達業務の課題や問題点を明確化する
・戦略立案:調達コスト削減の目標を設定し、具体的な施策を計画する
・実行:計画に基づいて、調達プロセスの見直しやサプライヤー管理の最適化を進める
・モニタリング:実施した施策の効果を定期的に測定し、評価する
・改善:評価結果に基づいて、さらなる改善策を検討し実施する

これらのステップを繰り返し実践することで、継続的な調達コストの削減と調達業務の効率化が可能となります。
また、今後の展望として、テクノロジーの活用がますます重要になってくると予想されます。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ブロックチェーンなどの先端技術を調達業務に導入することで、さらなる効率化とコスト削減が期待できます。

しかし、これらの技術を導入する際も、単に最新技術を取り入れれば良いというわけではありません。自社の業務プロセスや組織文化に合わせて、適切に技術を活用することが重要です。
調達コストの削減は、企業の競争力を高める上で非常に重要な取り組みです。本記事で紹介した方法やポイントを参考に、自社の状況に合わせた最適な調達コスト削減戦略を立案・実行することをお勧めします。
また、調達業務の効率化や最適化を進める上で、専門的な知識やノウハウが必要な場合も多々あります。そのような場合は、調達コンサルティングや調達システムの導入支援などを行う専門企業のサービスを活用することも一つの選択肢です。

調達コスト削減は、企業の収益向上に大きく貢献するだけでなく、競争優位性を築くためにも重要な取り組みです。
しかし、闇雲にコスト削減を進めるのではなく、サプライヤーとの良好な関係を維持しながら、長期的な視点で取り組んでいくことが重要です。
もし、
「どこから手をつければいいか分からない」
「自社に合った調達コスト削減の方法を知りたい」
「システム導入を検討しているが、何から始めればいいか分からない」

など、お悩みの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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