管理図を用いた品質の管理方法は?グラフの仕組みや異常判定のルール

著者:ものづくりコラム運営 管理図を用いた品質の管理方法は?グラフの仕組みや異常判定のルール

管理図とは、製品の品質のバラつきを折れ線グラフで見える化し、製造業の品質管理をサポートする管理ツールです。管理図は、製造プロセスの異常な状態の早期発見に役立ちますが、複雑な仕組みや異常判定のルールなどの理解も必要です。この記事では、製造業の従事者が押さえておくべき管理図のポイントをわかりやすく解説します。

1.管理図の基礎知識

管理図とは、製品の品質管理にあたって、品質のバラつきを分析するための折れ線グラフです。
バラつきの原因が偶発的なもの(偶然原因)か、なんらかの異常によるもの(異常原因)かを判断するために使用します。

管理図を用いることで、品質管理の担当者は製造プロセスのバラつきをリアルタイムで監視できるだけでなく、必要に応じて製造プロセスの微調整や改善を行えます。

また、管理図は「QC(品質管理)7つ道具」のひとつでもあります。QC7つ道具とは、品質管理において具体的な数値データを元に原因を分析し、品質改善を図るために用いられる7つの手法を指します。管理図以外の手法は「パレート図」「特性要因図」「ヒストグラム」「グラフ」「チェックシート」「散布図」です。

また、近年では数値データだけでなく、数値化で表現できない言語化されたデータを用いて思考を整理して、新たな発見につながる「新QC7つ道具」も注目されています。

新QC7つ道具の詳しい解説については、こちらの記事も参考にしてください。
関連コラム:新QC7つ道具とは?各手法を用いてできることや活用時の注意点

関連コラム:新QC7つ道具とは?
 

2.管理図の構成要素と仕組み

次に、管理図の3つの構成要素「中心線(CL)」「上方管理限界線(UCL)」「下方管理限界線(LCL)」と構成要素を用いた管理図の仕組みについて解説します。
 

管理図の構成要素

管理図は、「中心線(CL)」「上方管理限界線(UCL)」「下方管理限界線(LCL)」の3要素で構成されています。

中心線(CL)は、製造プロセスの品質特性の平均値を示し、中心線に近いほどバラつきを抑えることを示します。上方管理限界線(UCL)と下方管理限界線(LCL)は、上方または下方に許容できる「偶然原因」によるバラつきの最大値と最小値です。

偶然原因:製造プロセスが正常でも避けられない自然な品質のバラつき。一方で、異常な品質のバラつきは「異常原因」という。

管理図の折れ線グラフにプロット(打点)されるデータは、「群」と呼ばれる日時やロットごとに定めたサンプルデータの集まりからなり、サンプル数「n」とは各群の大きさを意味します。
 

管理図の仕組み

管理図の監視は、折れ線グラフにプロットされたデータポイントを計測します。

管理図にプロットされたデータポイントが、中心線(CL)と管理限界線(UCL、LCL)の間に収まっている場合、「製造プロセスは安定している」と統計的に判断できます。

また、管理限界線(UCL、LCL)を超える場合であっても、各プロットの標準偏差「σ(シグマ)」が正規分布になっていれば自然なバラつきであると判断できます。

標準偏差「σ」:中心線(CL)からのバラつきの度合い。偏差値のようなもの。

正規分布:中心線(CL)と管理限界線(UCL、LCL)が対になった左右対称の確率分布。自然なバラつきであることを示す。
 

3.管理図の種類

管理図は大きく「計量値管理図」と「計数値管理図」の2つに分類されます。

計量値とは、測定によって得られる「連続的に変化する値」です。例えば、長さや重量、時間などの数値が当てはまります。

計数値とは、カウントができる「離散的な値」です。例えば、不良品、不適合品の個数などが当てはまります。
 

計量値管理図

● X-R(エックスバーアール)管理図
X-R管理図は、群ごとの測定値の平均を示した「Xbar管理図」と群ごとの測定値の範囲を示した「R管理図」が上下に並ぶ管理図です。測定値の平均値と分布範囲を同時に確認できます。X-R管理図を用いて監視することにより、製品の寸法や重量などの品質と工程を管理しやすいのが特徴です。

 

● X-S(エックスバーエス)管理図
X-S管理図は、群ごとの測定値の平均を示した「Xbar管理図」と群ごとの測定値の標準偏差「S管理図」が上下に並ぶ管理図です。測定値の平均値と標準偏差を同時に確認できます。X-R管理図に比べて、より正確に群内の変動を把握できるため、大きなサンプル数の監視に用いるのが特徴です。

 

● 計数値管理図
計数値管理図は、カウントできるデータ(不良品の数や事故の件数など)を対象とした管理図です。特定の期間やサンプル群における不良品や事故の件数を監視し、プロセスのパフォーマンスと安定性を評価するために使用します。主に「np管理図」「p管理図」「c管理図」「u管理図」などの種類があります。

 

● np管理図
np管理図は、特にサンプル数nが一定である場合に使用する、不適合品数npを算出する管理図です。不適合品率npとは、サンプル数を示すnと不適合率pをかけあわしたものです。

 

● p管理図
p管理図は、サンプル数nが一定である場合に使用する、不良率Pを算出する管理図です。不良率Pとは、不適合品npをサンプル数nで割った値です。

 

● c管理図
c管理図は、一定の観測範囲またはサンプル数nで発生する事象の回数を追跡する管理図です。各ロットに含まれる不具合や欠点の数の監視に適しており、計測する範囲が限られている場合に利用できます。

 

● u管理図
u管理図は、サンプル数が異なる場合でも使用できる、欠点率(欠点数の平均値)を計測する管理図です。同じく欠点数を計測するc管理図とは、サンプル数が一定でなくても品質管理に使える点が異なります。

 

4.品質管理における管理図の重要性

ここからは、品質管理における管理図の2つの重要性「異常の早期発見」「品質のバラつきの改善」について解説します。
 

異常を早期に発見できる

管理図で異常判定を検出した場合、製造プロセスになんらかの異常が発生していることをリアルタイムで判別できます。製品品質に関わる潜在的なリスクを早期に発見でき、品質事故の発生を最小限に抑えられます。
 

品質のバラつきが小さくなる

管理図を測定することで、品質のバラつきや製造プロセスの安定性の継続的な監視につながります。製造プロセスの微調整と改善により不良率が低下し、安定した品質の製品を提供できるようになります。
 

5.異常判定の8つのルール

ここでは、管理図で判別できる具体的な異常判定のルールについて解説します。このルールに基づいて監視を続けることにより、異常発生の早期発見につながり、品質管理の安定性が向上します。

ルール1.ある点が管理限界線を超える

管理限界線(UCLやLCL)を超えるデータポイントが存在する場合、製造プロセスの異常な変動を示していることがわかります。
 

ルール2.連が現れる

中心線から上方または下方にデータポイントが何度も連続してプロットされる場合、製造プロセスになんらかの異常が生じている危険性があります。
 

ルール3.一定方向に連続した傾向がある

データポイントが一定方向に連続して増加または減少する傾向がある場合、製造プロセスになんらかの異常が生じていることを示しています。
 

ルール4.点が連続して交互に増減している

データポイントが中心線を交互に上下し、ジグザグに推移している場合、製造プロセスに周期性のあるトラブルが存在している危険性があります。
 

ルール5.連続する3点のうち2点が領域A以上にある

3つ連続するデータポイントのうち2点が、管理限界線に近い異常領域Aにある場合、製造プロセスに異常が起きていることを示唆します。
 

ルール6.連続する5点のうち4点が領域B以上にある

5つ連続するデータポイントのうち4点が、中程度の異常領域Bにある場合、製造プロセスになんらかの異常が起きていると判別できます。
 

ルール7.点が中心線の近くに集まりすぎている

データポイントの多数が中心線に密集している場合、バラつきが抑えられています。ただし、自然なバラつきのない計測値は品質管理に役立たないため、群わけの見直しが求められます。
 

ルール8.連続する8点が領域C以上にある

8つ連続するデータポイントが、さらに低い異常領域Cにある場合、製造プロセスに異常があると判別できます。
 

6.システムを活用して効率的に管理図を導入しよう

管理図を用いた製造現場の見える化には、データ収集と解析を自動化するシステムの導入がおすすめです。手作業でのデータ収集と分析の労力を削減し、正確な品質管理につながります。

製造現場の見える化におすすめなのが、AIを活用して稼働監視を行うIoTシステム『A-Eyeカメラ』です。
 

『A-Eyeカメラ(エー・アイカメラ)』

A-Eyeカメラは、ネットワークカメラで撮影した画像をAIが分析することで、生産設備の稼働率や稼働状況などを自動判別し、製造現場の見える化を実現します。

A-Eyeカメラの機能は次の通りです。
・リアルタイムあんどん表示
・アラート通知
・充実した分析表

監視下にある機械の稼働状況やエラーをクラウド上に保存するので、どこにいてもパソコンやタブレット、スマートフォンから一画面で確認できます。また、システムの停止などの不具合があった場合、関係者へ自動的にアラート通知を出すことが可能です。

記録した稼働状況はグラフで確認・分析でき、管理図作成にも役立てられます。稼働率の推移や傾向の把握、改善効果のチェックなど、生産設備ごとのさまざまな分析が可能です。
 
製品の詳細はこちら:AI画像認識で工場を見える化『A-Eyeカメラ』
 

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