第71回「~変化をチャンスに~ 中小製造業におけるリスキリングの必要性」

著者:井上 創(いのうえ つくる) 第71回「~変化をチャンスに~ 中小製造業におけるリスキリングの必要性」

本記事は、

とお悩みの中小製造業経営者様向けの記事です。

1.リスキリングとは

経済産業省はリスキリング(Re-skilling)を
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
と定義しています。

簡単に言えば世の中の変化によって、新たに必要となったスキルを獲得するということです。

近年では、特にデジタル化によって生まれる職業や、仕事の進め方が大幅に変化する職種に就くためのスキル習得を指すことが増えています。

2.リスキリングは、個人の努力目標ではなく、重要な経営課題

では、そのリスキリングを個人に任せるとどうなるでしょうか。

上図の例のように、個人が目標を設定し、その目標に必要なスキルを学んだ(リスキリングした)場合を想定すると、結果として、転職に必要なスキルを獲得し、自社を去ってしまう可能性が高まります。

したがって、リスキリングは個人だけに委ねるのではなく、経営課題として捉え経営者自らが、以下の要素を検討することが重要です。
・将来、どのようなスキルが必要か(目標設定)
・従業員の、現在のスキルレベルはどれくらいか(現状把握)
・何を学んで欲しいのか(課題設定)

その上で、就業時間内に従業員へ学びの機会を提供する必要があります。

3.何を学ぶべきか

リスキリングでどのようなスキルを学ぶべきかは、会社が将来に目指す方向性や現在の状況次第です。
そのような前提のもと、多くの場合で必須になり得るのはITスキルの獲得です。
どの業界、どの職種であったとしても、今後デジタル化の波を避けることはできません。製造業においても管理システムの導入、スマートファクトリーなどDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は確実に来ています。
したがって、自分のスキルをアップデートし、これらの変化に適応することが、個々の従業員にとっても、組織全体にとっても重要になっています。

リスキリングに伴うコストは、必ずしも多大な費用を要するわけではありません。実際、ITスキルの習得を始めとするリスキリングの機会は、無料オンライン講座など多く提供されています。これらを上手に活用することで、コスト負担を最小限に抑えつつ、必要なスキルを身に付けることが可能になります。

例えば、以下のような無料リスキリングサービスがあります。

■JMOOC
大学講師陣および企業が提供する本格的なオンライン講義を公開し、誰もが無料で受講できる教育サービスを提供。
https://www.jmooc.jp/

■日本リスキリングコンソーシアム
国や自治体、そして民間企業が連携して実施している無料の人材支援プロジェクト。
ビジネス・マーケティングやAI、インターネットセキュリティ、学校教育など、幅広いコンテンツをカバー。
https://japan-reskilling-consortium.jp/

弊社でも、生産管理システム「TECHS」シリーズのTCSS/保守契約ユーザー様には無料研修会(TMS)を提供しています。
この研修会では、ITスキルだけでなく、ロジカルシンキングや会計などのビジネス基本スキルについても幅広く学んでいただけます。特に中小製造業に特有の、身近な事例を用いた講座内容となっています。

4.まとめ

・リスキリングは「世の中の変化によって新たに必要となったスキルを獲得すること」
・リスキリングは、個人任せにするのではなく、重要な経営課題として捉えることが重要
・リスキリングの機会は、無料で提供されているものもある

この記事が、皆さまの経営改善の一助になれば幸いです。

               著者画像
井上 創(いのうえ つくる) 製造業ソリューションサービス部ソリューションサービス部

大手鉄鋼メーカーでの生産技術エンジニアを経て、経営コンサルタントとして多くの企業様の経営改善を行ってきました。
エンジニア時代に、仕入先であった中小製造業様が日々経営に悩まれている姿を目の当たりにし、「将来少しでもお手伝いできれば」と考え、中小企業診断士の勉強を始めました。
エンジニアとしての「現場改善」、コンサルタントとしての「経営改善」の経験を活かして、お客様の経営課題の解決を支援いたします。