ものづくりコラム COLUMN

第64回 理解して活用する『損益分岐点分析』

著者:田中 玄音(たなか くろね)

こんにちは。株式会社テクノアの田中です。
私は、事業計画策定時に必要な損益予測や管理会計のしくみ作りなどに多く携わってまいりました。その際、とりわけ製造業において活用しているのが、今回のテーマ『損益分岐点分析』です。
ここで皆様に質問です。いくつ✔が付きますか?

▢ なぜ損益分岐点分析が必要なのかわかる
▢ 自社の変動費・固定費を把握している
▢ 自社の損益分岐点売上高を把握している
▢ 目標営業利益額を達成する売上高を把握している

現時点での✔結果は気にされることはありません。まずはこのブログで『損益分岐点分析』の概要を学んでいただき、興味を持たれましたら詳細をTECHS保守(TCSS)ご契約ユーザー様限定のTMS講座にて無料動画で学んでいただけるようにしています。(TMS講座については最後にご案内します)

完璧な数値を求める必要はありませんが、できるだけ精度の高い経営指標として機能させるためにも『損益分岐点分析』を理解して活用していきましょう。

1.なぜ損益分岐点分析が必要なのか?

仮に、貴社の売上高が20%減少したとします。「貴社の営業利益額はどうなりますか?
このように質問しますと、「利益も20%減」という回答をはじめ、様々な回答が出てくると思います。結論は「すぐにはわからない」という回答になります。下図(右)にありますように、費用構造は同業他社であっても企業ごとに異なっており、同じ売上高であっても営業利益額は異なります。また同様に、売上高が20%増減した場合の営業利益額の増減幅も異なります。
まずはここでは、「自社の費用構造を把握しておかないと、正しい損益予測ができない」とご理解ください。(損益分岐点分析はその把握のための手段)

2.自社の変動費・固定費を知るには?

損益分岐点分析に先立ち、自社の変動費・固定費を把握する必要があります。固定費と変動費に分解するという意味で、これを「固変(こへん)分解」といいます。固変分解には複数の方法があります。手間と精度を勘案して自社に最適な方法を採用することになります。
売上原価を変動費とされている企業もありますが、小売業でしたらそれほど支障はないのですが、製造業ですと注意が必要です。(製造原価報告書との関係から)
まずはここでは、「勘定科目法により、製造原価報告書の材料費・外注加工費変動費の候補である」とご理解ください。

3.自社の損益分岐点売上高を知るには?

損益分岐点売上高とは、一般的には「営業利益がゼロとなる売上高」のことをいいます。営業利益ではなく経常利益を起点とすることもできますが、「本業の損益分岐点を知る」という意味では営業利益が適切です。
よく「計算式が覚えられなくて…」という声を耳にします。私は元・簿記会計教員ですので、そのような学生の声に対しては自信をもって「計算式を覚える必要はない」と助言していました。
下図(左)にありますように、固変分解の結果、各比率(変動費率・限界利益率)と固定費が把握できれば、「営業利益がゼロとなる」という結論をたよりに計算式が導き出せます。これは何年経っても忘れない学習方法です。また、応用も利きます
TMS講座『損益分岐点分析』において、演習問題付きで計算方法を解説いたしますので、ぜひご活用ください。

4.目標営業利益額を達成するには?

実務上、皆様の関心度が高いのは、損益分岐点売上高ではなく「目標営業利益額を達成するにはいくら売上が必要なの?」ではないでしょうか。事業計画策定時はその思考で損益予測を行います。
前章で「計算式を覚える必要はない」「応用が利く」と述べました。下図(左)にありますように、公式暗記ではなく計算式を導き出せるようになっていると、「営業利益○円を達成するには?」にも対応できます。また、下図(右)にありますように「目標営業利益“率”を達成するには?」にも応用が利きます。
TMS講座『損益分岐点分析』において、演習問題付きで計算方法を解説いたしますので、ぜひご活用ください。

5.まとめ

このブログでは、まずは『損益分岐点分析』の概要を学んでいただくことを目的としました。完璧な数値を求める必要はありませんが、できるだけ精度の高い経営指標として機能させるためにも『損益分岐点分析』を理解して活用していきましょう。
詳細解説には文面より動画が適していると思いますので、興味を持たれましたらTECHS保守(TCSS)ご契約ユーザー様限定のTMS講座にて学んでいただければと思います。

田中 玄音(たなか くろね) 製造業ソリューション事業部 ソリューションサービス部

2022年 テクノア入社
2020年 中小企業診断士登録
熊本県立大学 大学院(専攻:企業会計)修了

制御系SE、学校法人(専門学校教員・経営部門)勤務を経て、
中小企業診断士としてテクノアに入社しました。
経歴上、管理会計のしくみ作りや、経営効率化のためのIT活用を得意としています。
財務分析を起点に、お客様の経営課題の解決を支援いたします。